『月姫』





制作:Type Moon(同人)
発売:2000/12
プレイ:2004年ごろ
必死に探し求めて1万前後で購入
その価値はあると思うが……今なら買わんな(苦笑
人生初ってこともあり、未だに私的ランクトップ
超えるのに会いたいような、会いたくないような




*めっちゃネタバレです!






シエル

 自分の命を絶ち、先輩が普通に死ねることを望む。絶対お涙ちょうだいの場面。ここでもちろんウルッとくるのだが、安心してはいけない。この後が最強なのだ。自分を見て、微笑んでくれる先輩。涙が星屑のように落ちている。この場面で僕の涙線は一気に活性化してしまった。もう、ずるいですよ。あんな事になるなんて。

 先輩が死ねないと持ってきて、その原因がロア……ん〜上手いですね。先輩が死なないと分かっているのに、庇う志貴もかっこいいですし。あの、あなたを殺しますっていう場面は一番の涙場面ですよね。
 もし、あのまま志貴を殺していたら先輩はもうきっと、本当に何も感じなくなってしまうのではないかと思いますし。それに、どんな気持ちで志貴を殺そうとしているのか……考えるだけでつらいですね。仕事、そして、自分の死を取り戻すのにこんな試練はきつすぎますからね。

 日々、教会の者に刺され殺される……けれど、死ねない。けれど、痛みは確実にある。 そんな時を気が狂いそうになりそうになりながらも、先輩は生きていた。
 否、生きるしかなかった。そんな彼女が死を望むのは当たり前。ロアに血を飲ませたアルクを憎むのも当然。余分だが、彼女を最初にクリアしてよかった。他のシナリオで正体を明かされるのはちょっと……。



アルクェイド
・トゥルーED
 
 約束を……。志貴の夢を見る。そう言った彼女の言葉に頬を涙が伝っていました。叶えられない現実と、夢であり続ける恋。どちらが、幸せで不幸なのかは判断できません。けれど、彼らはすっきりしていたはずです。出会う事はもう二度とない。
 だけど、この恋物語は志貴の中では思い出として、アルクの中では目覚める時まで続く現実としてあり続ける。そんな気がしました。

・グッドED
 最期の時を志貴と過ごしたい。そう考えたのでしょうか?そうだとすると、あの笑顔はきついですね。何も知らない志貴と知っている彼女。好きな人と過ごしたい。
  そう思ったのは、もう目的がなくなってしまったからなのでしょうか?それとも、少しの間だけでも人として志貴と共にいたかったからなのでしょうか?
             

  死徒を殺すために育てられたアルク。そんな彼女に与えられたのは、敵の情報とその時代の情報だけでした。だからなのか、志貴と話す彼女はまだ生まれたての幼子のような危うさと、喜びを全身にもっています。

 後々判明するのですが、彼女は感情というものを知りませんでした。ただの、武器に過ぎなかったのです。ロアを追い、殺す。それを何年もの間繰り返してきた。それだけを目的として。

 志貴の気持ちを聞いて、ロアを倒しにいく場面は一番の見せ場です。戦う力もないのに、最後の力を振り絞ってロアを倒す……アルクは笑っていいます。
 ロアを倒せたと……けれど、本当は生きていた。アルクがこんなにも力を振り絞ったのに……。最後は志貴やっつけろー!と応援してました。

 トゥルーでもう一度眠りにつくと言った時、ハッとしました。それは、志貴の言葉を受け取ったという事だから。生きている事自体が喜び……それを、アルクは感じたかったのではないか。志貴と過ごしたい。
 けれど、その気持ちも感じてみたい……そういう感情が隠された「月姫」でした。  



秋葉
トゥルーED
 死んじゃったの?と疑問符を浮かべつつ涙を流していました。うーん、秋葉の語りで、兄はまだ生きていると出てくるんですが、なんというか複雑。CGでナイフを抱きしめている秋葉を見ると、それに乗り移ったのか!?とかアホな考えが浮かんじゃいますし。主人公かっこいいんですけどね〜。死んじゃってたら嫌ですよ、本当。

・ノーマルED
 秋葉だけノーマル。その訳は……って痛い!生きていてくれ。その気持ちは分かりますが、秋葉は幸せなんでしょうか?獣と化し、自分が誰かさえも、さらには志貴のことも覚えていない。そんな秋葉は自分を秋葉だと認めるのでしょうか? いつか……志貴の気持ちにシンクロし、涙ですよ。


「自分が自分でなくなった時は、誰よりも愛する貴方の手で殺してください」
秋葉は気づいていたんでしょうね。自分の終わりが近い事に。志貴を愛し、そして彼に愛された秋葉は守ってくれそうもない兄に言います。

 本当の兄が現れても彼女は動じません。彼女にとって、兄はただ一人――志貴――だけだったからです。彼女にとっては志貴が何よりも大事な者なんでしょうね。生きて欲しい。そう願ったのかもしれません。

とまあ、堅い事は置いといて。学校を移って一緒に過ごすなんて普通やりますか?金持ちの考える事は分かりません。
 けれど、こちらとしては兄・妹をやっている学園生活はニヤリとさせられます。本当にかわいいのに、どっちに行っても一緒に過ごせないのはひどい。
 まあ、これが一番いいエンドなんでしょうけど。変にハッピーに行ってもしらけてしまいますし。秋葉編で分かったのは、彼らは媚を売らないということですね。                   



翡翠
・ トゥルーED
 最後のCG……リボンが風に飛ばされてしまう場面です。もう、なくしかないでしょう。自分の姉を失った翡翠。姉は秋葉を、四季を遠野家を恨み殺しました、いや、それを目的として生きていました。
 秋葉が死んでいく場面はもうつらくて、誰もが被害者で四季が悪いのだと思っていたのに、事実は残酷でした。姉を失った翡翠は大丈夫なのか?そう思ってしまいます。

・グッドED
 琥珀が秋葉を庇います。それにより、彼女は一命を取り留めます。けれど、目的がなくなった人形は死ぬしかないと毒物を飲みます。病院で目覚めた彼女は、記憶喪失でした。
 それは、もしかすると彼女にとって幸せな結末なのかもしれません。琥珀を捨て、七夜として生きる。翡翠がトゥルー同様昔の翡翠になろうとする。琥珀と翡翠エンド……そう言ってもいいぐらい、彼女たちは幸せになれそうです。    


 信じられないなら、私を信じていいから!そう滅茶苦茶な事を言って志貴を納屋から連れ出したのは翡翠でした。性格の変化は想像通りでした。
 翡翠になった琥珀と琥珀になった翡翠。彼女に守られるために潔癖症になった翡翠。翡翠を守るために能面をかぶり人形になった琥珀。

 慎久の金庫に隠されていた日記を読んでゾクッとしました。人形になればいい。それって……。正直、琥珀が気になって翡翠どころではありませんでした。もっとも翡翠はかわいいのですぐに矢印が向き直ったのですが。
 
 このシナリオでは、誰も悪者はいません。全てを仕組んだ琥珀はそうしなければ生きられなかった。否、そうすることで人間でいようとしていた。
 本当、何が幸せなのだろうかと悩まずにいられません。被害者多いけれど、加害者は独りも居ない。なぜなら、それを生み出したのは人の心に他ならないから。



琥珀
 想像はついていたんですが、痛いですね。彼女の過去は嫌って程翡翠シナリオで見せられましたが、彼女の口から語られるのでは全く違いました。
 このシナリオでは本当に人殺しになっちゃったの?と信じたくなるような文章力の上手さです。今までやってきて、わかっているはずなのにもしかしたら今度は……。
 四季と出会ったのは本当だといいんですが。彼、狂っているけれど、狂わしたのが琥珀だなんて……余計胸が痛いです。
 秋葉に血を吸われるシーンで秋葉がかなり怖い事を言っているし。気づいてたんですね、秋葉さんとか思いつつ、興奮しっぱなしでした。だって、分かっているのに血を吸う彼女って。

 彼女を助けられるのは志貴だけ、幼い頃声をかけ続けた志貴だけ。彼女は翡翠になりたかったんですね。でも、翡翠を傷つけたくなかった。
 しかし、彼女は慎久の屈辱に耐えられるほど強くもなかった。だから……人形になった。彼女は壊れたくなかったんでしょうか?

 秋葉を殺そうとするが、殺せない志貴は自ら命を絶とうとする秋葉をとめる事ができませんでした。このままいっちゃうの?そう思ったとき、琥珀が彼女の手を止めたのです。あーもう!涙しか出ないですよ。
 
 最後、志貴が長野に琥珀に会いにいくシーンの絵もいいんですが、涙はあのシーンが一番だと思いますね。




まとめ
 この作品は一体何回僕を泣かせれば気が済むんでしょうか?キャラ設定の上手いこと、世界観の重要性、そして何より文章力と付箋の数と回収の上手さ。どれをとっても、僕はこれ以上の作品を知りません。

 もう、いちゃもんのつけようがないですよ。完璧ですもん。 シエル編では死の尊さを、アルク編では生きる喜びを、秋葉編では自己の重要性を、翡翠編では罪の矛先を、そして、琥珀編では傷の重さと約束を。
 それぞれ、テーマがはっきりと分けられていました。大きなテーマは一緒にしろ、個々のテーマをこれまで緻密に書き上げる文章力と想像力。
 何よりも、世界観が崩れずに人をあっさりとだましてくれる。 こんな作品を書けるなんて人間ってなんてすごいんだろうと身震いします。

 Hはありますが、本当に必要だと感じたのは琥珀と翡翠だけですね。まあ、カッコつきでシエルも。内容と絡めて使ってくる点はさすがだと言わざるおえないです。
 他もとってつけたような感じではなく、自然な流れでしたし。本当、このゲームをプレイできて嬉しい限りです。






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