『そらうた』





制作:FrontWing
発売:2004/8/24
プレイ:2007年
幽霊が、人には見えないものが、彼は見える
だからこそ、「別れ」に鈍い
感情など動かない
それは、まるで「壊れた心」




*ちょいネタバレあり






瀬戸内 葵

 記憶を失った少女、自分と似たようなにおいがする女の子。彼女の過去は、真実とはいったい何なのか。意外。この一言に尽きるんじゃないかなと。
 まぁ、初プレイで彼女を何故か攻略してしまったことが大きいんだとは思いますが。伏線が回収される様は見事。
  
 主人公に共感できなかったというか、子ども過ぎる彼の行動と思考について行けなかった。失いたくない、その気持ちは分かる。彼女は今まで見送ってきた霊とは全く違うのだから。
 でも、本来生きているはずの葵の存在を無視して、自分だけの価値観で押し切ろうとしている感じがして…。

 葵の独りぼっちの寂しさも分かるし、葵の生きていたいって想いも分かる。ヒロインの気持ちはどれもよく描いてるのに、なしてここまで主人公をけ落とすのか。



佐倉 知夏
 
 ごめん、君たちおかしすぎるよ。知夏の奇行はまぁ、慣れました。でも、主人公なんですか?!ありえなくないですか?!

 いやぁ〜近年希に見る頭の弱い、痛すぎる男ですね彼は。使命感を示したいのか、知夏無しでは駄目だと言いたいのか、全くもって分からない。
 ただ、奴がムカツクってこと以外は。ってかさ、お前知夏に甘えすぎだろ。大人ぶってるつもりかもしれないけど、あんたおかしいよ、変だよ。
 でも、これが知夏の同情を誘ったと言っても過言ではなく……。そのあたりを想定して描いていたのなら、すごいなぁと思うけど、示し方が微妙だよねと。



夕凪 澪

 根暗な少女。真奈と親友以上の関係だった引っ込み思案の女の子。題材としては悪くないし、消化の仕方も良いのではないでしょうか。
 まぁ、真奈のおまけみたいな感じにも見えなくはないですが。でも、自分は結構好きです。
 真奈に比べたら見劣りする感はぬぐえませんが、生きている彼女にしかできないこと。その結末は、命を育むこと。つなげていくこと。




永澄 真奈

 幽霊少女。主人公の特性を一番生かしたシナリオだったと言えるだろう。
 一緒にいたい、けれど、それは叶わないことが分かっている。未来に続く道など途絶えていることは最初から決まっていた。
 それでも、人は恋をして、その温かさを求める。誰か、ではなく彼女であるから。

――僕の心は壊れている。
 彼が壊れているとしても、それを意識させない二人の空間。特別な一瞬と、もう二度と過ごすことの出来ない時間
 生きているのだから、何かできることを。時間を無駄にしてはならない。
 それは、澪に当てはまった言葉だったのかもしれない。




小西 霊子
 彼女の性格も、口調も好きじゃない。今までの話を、他のヒロインたちを一般キャラに下げてしまう点も、彼女に好意を持てないからこそ、嫌だ。
 でも、それでも、やっぱり、このシナリオはこの作品の核で、全てだ。

 彼女と恋仲になる必要があったのかどうかはわからない。誰かを好きになる必要はあった、でないと、先生のあの異常なまでの行動は理解できないし、何も出来ないのだから。
 たまねぇと恋人になる。それは禁忌。彼女が犯した二つの罪の一つ。そう考えると、たまねぇじゃないとこの話は駄目だったのかなぁと思わなくもないけど、認めたくはないかな。 
 
 彼が霊を見れるのは何故か、触れられるのは何故か。まさかこんな落ちがあったとは。
 
 作品の結論としてのEDは素晴らしかった。




まとめ


――誰かが幸せでも、誰かにとって幸せとは限らない
 不幸は常に隣り合わせにある。誰かを好きになったり、心が動かされたり、そうして人は人を傷つけてしまう
 それでも、僕らは進んで行かなくてはならない。明日が、明後日に少しでもいろいろなことを許せるようにと願いながら。

 たまねぇが主人公を海の場面で引き留めたことが非常に印象的だった。優しさって何だ。彼女がしたこって間違いか、それとも、好きの結末として正しいか。
 もちろん自分勝手な行動であることに違いないが、人はみな自分のために行動するもの。極論だが彼女がしたことって純粋で、人間にしかできないこなんじゃないかと。道徳的にどうとかは別にして。

  人にとっての幸福論、を描いたとして見れば良作。ラブは求めてはならない。ギャグは知夏で補充。泣きは真奈&葵。ヒューマンドラマ、一つの流れが決まった物語として見なければ、ちょっときつい。
 たまねぇに魅力があれば、そうならなかったのだろうが。





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